【業者オークション】が車の買取相場を決める絶対相場という裏話

中古車流通の全体像 車買取業界の闇
記事監修者:
古物商:大阪府公安委員会第622030193808号
JAAI認定中古自動車査定士 査定士番号:0061753379
株式会社Direct Stock Japan 代表取締役 山本剛

車買取業界の絶対的なタブーである「業者オークション」について、今日は詳しく説明していきます。

 では、そもそも業者オークションの存在はなぜタブーなのか?

 

実は、これが一般の人に知れ渡ると、沢山ある車の買取店は「結局はどこも限界買取額が同じである」という事を証明してしまうからです。

 大手の車の買取業者はたいていCMで「どこよりも高価買取します!」「他の買取店より20万円高くかいます!」

みたいな事を宣言しています。

 

 しかし、実態は、大手であろうと、弱小の車屋さんであっても、買取の限界額は同じなのです。

 

 これは一体どういう事なのか?

それでは、中古車の流通の全体像をお見せして説明していきましょう。

常に業者オークションを経由する中古車流通の全体像とは?

一般の人が手放した車は次のような経路をたどります。

 

 中古車流通の流れ

ディーラーや車の買取専門店に引き取られた車は、上のような経路で、最終的には別のユーザーに引き取られるます。

 一般の人の多くは、青色矢印が示すような経路がある事はなんとなく知っていると思います。

 また、多くの人が業者のオークションの存在は知っていても、ほとんどの車は青色の矢印の経路を通ると思っている人が多いです。

 実際はその真逆なのです。

枝分かれしている部分を拡大してみましょう。

90%の中古車が業者オークションを経由する

実は、ディーラーや買取専門店に引き取られた車の90%は業者オークションに出品されています

 青色の矢印は全て足しても10%と考えてもらって問題ありません。

なぜプロ同士なのに、業者オークションを通して車を売買するのか?

上の流通経路を見て、疑問に思いませんか?

 疑問に思う方が自然ですよね。

何故なら、車を売りたい一般ユーザーから、車を買いたい一般ユーザーまで、なぜこれほどまでに間に業者が入らなければいけないのか?

 当然、間に入った業者は、そこで手数料を受けっとっているわけですから、複雑になればなるほど、無駄な手数料が発生するわけです。

 一般ユーザー同士の売買が直接成立させるのは難しいにしても、

 最初に車を買い取ったディーラーや車の買取専門店にすれば、直接買い取った車を一般のユーザーに売却してしまえば、マージンを相当カットできるはずですよね?

 実はここに、自動車王国の日本ならではの事情が絡んでいます。

その事情とは、大まかに言って4つあります。

  1. 国産の大手のメーカーだけでも沢山のメーカーがある
  2. 各メーカーが非常に多くの車種を製造している
  3. ユーザーの好みが細分化されてきている
  4. 車の価値が落ちるペースが非常に速い

これらが絡み合うと、業者がオークションを通したくなる理由がよくわかります。

以下解説していきますね。

業者がオークションを使わざるを得ない事情とは?

まず、先ほど箇条書きした①②ですね。

 今や、日本は言わずと知れた世界ナンバー1の自動車製造国です。

誰もが知っているメーカーだけでも、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱、スズキ、ダイハツ・・・

 どれもが世界的にも有名な自動車メーカーです。

さらに、それぞれのメーカーが数えきれないほどの車種を開発し、販売しています。

 

 新車の場合は、「トヨタ方式」という、車の注文が入ってから生産するというシステムが最近では主流になっていますので、無駄に作りすぎるという事はありません。

 しかし、中古車の場合、最初に車を買取(仕入)する、ディーラーや買取業者は、中古車を探しているユーザーからの注文で、その車を買取(仕入)するわけではありません。

 これだけ車種が豊富だと、引き取った車がその場で、別のユーザーに売れるという事は、よほどの幸運でない限り、滅多にありません。

 また、③に書いたように、最終的に中古車の消費者となるユーザーの要望も、最近ではどんどん細分化しています。

 例えば、一般的に中古車を探している人の平均的な希望は次のような例になる事が多いです。

  • メーカーはトヨタ
  • 車種はヴェルファイア
  • 3年から5年落ち
  • 走行は3万km~5万km
  • 2WD
  • ハイブリッド
  • ナビは純正のもの
  • 色は黒
  • できればサンルーフがついている
  • できればフリップダウンモニター(後席モニター)がついている

このような複雑な条件を全て満たすものが、偶然自分のお店に買取や下取りで入ってくることはあるでしょうか?

天文学的に低い確率になりそうですね。

 

 しかも、それが1年前や1年後に入ってきてもダメなんですよ。

その時に入ってこないとダメなんです。

 

 なぜなら、④の事情のように、中古車は放っておくとどんどん価値が下がるからです。

もし、ディーラーが1年前に下取りした車を

「この車ならいつか売れるだろう。」

と1年も保管していたら、保管費用もかかる上に、車の価値自体が仕入れたときよりも断然安くなってしまいます。

 

 また、お客さんが

「条件をすべて満たす車が入ったら教えてほしい」

と言って、その車が下取りで入ってくるのを待っていて、1年経ちました。

 

そのお客さんは1年間も待ってくれるでしょうか?

さっさと他のお店で買っているはずですよね。

 

 つまり、車種が限りなく存在する国内での中古車の売買は、者オークション抜きにはまず成り立たないと断言しても問題ありません。

 

業者オークションの存在がタブーである理由とは

最近では、インターネットの影響で、一般の人にも業者オークションの存在は、少しずつ知られてきています。

 しかし、ひと昔前までは、業者オークションは業界内では一般の人には秘密にしておくことが暗黙の了解となっていました。

 なぜなら、「中古車を買う業者」「中古車を売る業者」の双方にとって、それを知られる事はとても都合が悪い事だったからです。

 以下なぜ、都合が悪かったのか解説していきます。

業者オークションがタブ―な理由。~中古車を買う業者の場合~

 ひと昔前までは、車を買う業者といえば

  • 新車ディーラー(下取り)
  • 車の買取専門店

の2種類しか、一般の人にとっての選択肢はありませんでした。

 

 新車と乗り換えで車を売却する場合、

車を売る人にとって、新車ディーラーでの下取りは、メリットが大きいです。

 なぜなら、新車が納車されるギリギリまで車を乗って、その車でディーラーまで行くことができ、そして納車された新車に乗り替えてその車で帰る事ができますからね。

 これほどスムーズな乗り換えは他に有りません。

 

しかし、残念ながら、ディーラーの下取りは安いです。なぜ安いのか?

詳しくは、

車の下取りを検索する人が買取業界でカモと呼ばれる理由」の前半部分をお読みいただければと思います。

いずれにしても、ディーラーの下取りが安い事は、これだけ車の買取店が増えている事がなによりの証拠ですよね?

 ディーラーが下取りで頑張れば、買取専門店の存在意義が無くなるからです。

 

では、ここで、考えてみましょう。

そもそも買取専門店の存在意義とは何でしょうか??

 

それは、

「ディーラーの下取りよりも、高く買取すること」

に尽きますね。下取りより安けりゃ、存在意義もなければ、買取という商売自体成り立つはずがありません。

 しかし、多くの人は、「高価買取!」と宣伝しても、簡単に信用してくれません。

そんなお客さんに対し、ディーラーよりも高く買取ができる根拠を伝えなければいけません。

 

 そうすると、買取した車をディーラーと同じように業者オークションに出品している事を知られてはマズいわけですよね?

 多くの大手買取専門店で、「中古車販売」を同時にやっている理由はここにあります。

買い取った車をあたかも、直接別のユーザーに転売しているかのように宣伝するのがメインの目的です。

 もちろん直接売れる場合もあるのですが、実態としては9割が業者オークションへの出品なのです。

 

 また、同業他社との差別化がしにくいという問題も生じます。

一般の車の買取はどこに売っても、結局オークションに出品するだけのビジネスモデルですので、どこが買っても、結局出口は同じなのです。つまり、転売した際に得られる売上は同じです。

つまりは、どんな大きな買取専門チェーンでも、スケールメリットが生じません。

 そのため、実態は、看板を大きくすればするほど、店舗や会社の規模を大きくすればするほど、無駄な経費が掛かってしまい、1台あたりに買取できる金額がどんどん安くなってしまいかねません。

 業者オークションという存在が知れてしまうと、そのあたりの事情が丸裸にされてしまいます。

 そのため、大手であれば大手であるほど、業者オークションの存在をひた隠しにしている傾向があります。

 

業者オークションがタブーな理由。~中古車販売店編~ 

中古車販売店側も、ほぼ理由は同じです。

 

 恐らく一般の人達は、中古車販売店の店頭に在庫車両が並んでいるのを見て、

「下取りか買取で入ってきた車を並べているんだな」

と思っている人が多いようですね。

 

 もちろん、下取り買取した中古車を数日並べておくこともありますが、それが運よく売れる事はまずありません。

 店頭に並んでいる中古車のほとんどは、業者オークションで売れ筋の車仕入れてきたものなのです。

 しかし、買取と同様、中古車販売も、昨今、国道沿いを走れば、いくらでも中古車販売店を見つける事ができますよね?

 それほど競争の激しい業界で、実は仕入先は

「どこも全く同じ業者オークション」

という事が一般の人に知れわたると、これもまた差別化ができません。

 

 多くの中古車販売店で「他社にくらべ値段が安い」事をアピールしなければいけないのですが、そうすると、一般の人が業者オークションの存在を知っていると、「安さ」の理由付けが難しくなりますよね。

 また、業者オークションを経由している事自体、それを購入しようとするユーザーからすれば、「無駄なマージンがたくさん掛かっている」印象をぬぐい切れません。

 そういった理由もあり、業者オークションの存在は中古車販売店にとっても、できる事なら知られたくないものであると言えます。

 

業者オークションの存在をおおっぴらにできない最大の理由 = 中古車の絶対的相場

車の買取業者や、中古車販売業者にとって、業者オークションの存在が知られて困る理由は、

「中古車の流通において、業者オークションで形成される取引相場が、中古車市場の絶対的な相場となる事

 どういう事かと言うと、

例えば、今私の目の前に次のような車があったとします。

  • トヨタ
  • アルファード
  • 年式:平成20年
  • 型式:UA-ANH20
  • グレード:240S 8人乗り
  • 色:白
  • 目立つ傷凹み無し。(年式相応の状態)
  • 修復歴なし
  • 純正ナビ付き
  • 純正アルミホイル付き
  • 故障無し
  • 車検残は6カ月

例えばこれと同じ条件の車の過去(~1か月前ぐらいまで)の出品履歴を調べると、相場が分かります。

 これが、例えば50万円だったとしましょう。

これは、どんな業者であれ、よほどの素人でなければ、プロであれば誰が見ても50万円の価値の車なのです。

 そこに、業者間の差はほとんど生まれません。

もし、あなたがこの業者オークションの相場が50万円の車を所有していたとします。

 それを買取専門店Aに持っていきました。

Aの査定額はいくらになるでしょうか?

 48万円でしょうか? 45万円でしょうか?

 

 まず、オークションに出品するだけで、手数料や成約料がかかります。

またオークションの会場に車を運ぶのに陸送費がかかります。

 

 さらに、人為的なミス等(相場の読み違い、修復歴などの見落とし)が発生した場合、最悪20万円というレベルの大損害を被ることも少なくありません。(弊社では過去に1台の取引で50万円の損害を被ったこともあります。トホホ)

そのための保険費用?という意味あいでも、45万円で買っていては、商売は成り立たないでしょうね。

 

そうですね。実際には限界で40万円~43万円ぐらいじゃないでしょうか?

この条件は、基本的に、大手であろうと、どこであろうと、ほぼ同じですよね?大手だからと言って、業者オークションの相場が上がるわけでは無いですからね。

 

 当サイトでは、常々「車の一括査定は、ナンセンス」と言い続けているのはここにあります。 

 何十社、何百社競わせようが、査定額はこの限界値を超えることはあり得ないんです。

さらに、一括査定の場合、業者側に手数料が山ほど発生することで、限界の査定額がむしろ大幅に下がる事になります。

 このあたりの事情は「車一括査定とはピラニア巣食うアマゾンに裸で飛び込むが如し」という記事を読んでくださいね。

 

 要するに、ここで言いたい事は

  • 業者が、オークションの相場を越えた金額で買取ることは100%ない

という事なのです。

 

 中古車販売についても、同じような事が言えますね。

原則として、

  • 業者がオークションの相場より安い金額で売る事はない。

ただし、販売の場合、不良在庫の処分などで、例外的に安売りすることはあるかもしれませんね。これは十分考えられる事です。

 

 さて、この仕組みが一般の人に知れ渡ると、車の買取業者や販売業者は大変困る事になりますね。

 なぜか?

  • 価格で差別化することが出来なくなる

からです。

 通常、一般的なものを販売するような場合は、

「大きい会社は独自の仕入れルートや、スケールメリット活かせるので、安い」

という印象がありますよね?

 

 しかし、中古車の場合、業者オークションの相場という、絶対的な相場があり、卸売りや仕入れの値段が完全に統一されてしまっています。

そうすると、どんなにデカい会社でも、メガチェーンであっても、売るのも買うのも同じ土俵で、しかも同じ相場なのです。

 

 それを知られてしまうと、特に中古車のような、定価の無い価格が曖昧な商品の場合、お客さんとの商談や交渉において、業者にとってのメリットは何一つありません。

そのため、今でも中古車関連業者にとって、業者オークションの存在は、なるべくなら知られたくない存在なのです。

 

【余談】あり得ない広告の話

 まれに、「うちは、オークションを通さず販売できるネットワークがあるので、業者オークションの相場より高く買取できます」

 なんて、宣伝をしている買取業者がいます。

まあ、マーケティングをかじった人なら分かると思いますが、これほどアホな宣伝文句はありません。

 そもそも、ほとんどの一般の人は業者オークションの存在すら知りませんし、仮に業者オークションの存在を知っていたら、これがあり得ないウソだという事も一目瞭然だからです。

 なぜなら、

業者オークションの相場を越えて買取するなら、初めから業者オークションで買えばいいでしょう。

 その方が、より条件を絞り込んで、いい車を選らんで、買えてさらに、その方が安くなるんですからね。

 なんでわざわざ一般のユーザーから、選べない、手間がかかる、リスクの高い車を、オークションの相場より高い金額で買う必要があるんですかね?

 誰でもウソとわかるような宣伝文句です。一般消費者をバカにしてるとしか言いようがありませんね。(笑)